もともと日本に伝えられていた、いくつかの歌や舞。そして、5世紀から9世紀にかけ、朝鮮半島や中国大陸などから渡ってきた舞や器楽。それらの諸芸を源流にして、平安時代の王朝貴族たちがまとめ直したのが、現在に伝わる雅楽の基となるかたちです。
時流の波にさらされながら、永く受け継がれてきた大切な遺産。『源氏物語』や『枕草子』にも描かれた歌や舞や器楽へ、千年以上の時を経て今も触れることができるのは、大きな驚きでもあります。
雅楽には、日本固有の古楽に基づく国風(くにぶり)の歌や舞、外来の音楽を基とする中国系の唐楽(とうがく)と朝鮮系の高麗楽(こまがく)という舞や器楽、そして、平安時代に作られた催馬楽(さいばら)や朗詠などの歌物とがあります。
演奏の形式は、器楽合奏である管絃と、舞に器楽演奏を伴う舞楽、それに声楽を主とする歌謡とに分けられます。皇室の儀式のほか、寺社の祭祀などでも演じられ、ユネスコの世界遺産「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」にも記載されています。